不妊に悩む夫婦は8組に1組の割合で存在します。不妊の原因は女性側と思われがちですが、実際は約50%の割合で男性にも問題があります。しかし、不妊の治療は女性中心となっており男性側には詳しい説明がなく治療も行われていないケースがあります。そのような状況の中、大分県内で数施設しか男性不妊を診療できる所がないため、男性不妊診療を行うことで少しでも不妊で困っているカップルの助けになりたいと考えます。

男性不妊診療内容
一般不妊治療(男性不妊)について
令和4年4月より一般不妊治療の検査及び治療が保険適用となりました。
[対象患者]
1) 入院中の患者以外の不妊症の患者
2) 不妊症の患者とは、特定のパートナーと共に不妊症と診断された者をいう
不妊症は、避妊具などを用いず1年間定期的に性交渉を実践したにもかかわらず、自然妊娠に至らないことと定義されます。
1, 保険適用となる一般不妊の検査・治療
・超音波検査
・血液検査
・精液検査
・漢方薬、ホルモン剤、勃起不全治療薬など各種薬剤
2, 保険適用にあたって以下の事項にご留意ください
1) 治療計画書
保険診療を行うにあたり、初回の治療計画の説明の際は、原則として患者さんとそのパートナーの同席で説明を行い、
同意及び書類の提出が必要となります。どうしても同席が困難な場合は医師にご相談ください。
※6カ月に1回はご夫婦で受診いただき、治療方針を確認します
以下のいずれかに該当することを確認させていただきます
ア 当該患者及びそのパートナーが、婚姻関係にあること
イ 当該患者及びそのパートナーが、治療の結果、出生した子について認知を行う意向があること
ウ 他院で、生殖補助医療管理料を算定されていないこと
必要書類
・婚姻関係にあるご夫婦:戸籍謄本等夫婦であることを証明する書類 1通
・事実婚など婚姻関係にないカップル:住民票等事実婚の証明となる書類
2) 一般不妊治療管理料
750円(3割負担の場合)
※3か月ごとに1回発生します
男性不妊の原因は以下が推測されます。
1, 精子をつくる機能が低下(造精機能障害)
2, 勃起や射精がうまくできない(性機能障害)
3, 精子の通り道の異常(精路通過障害)
4, 精巣上体・前立腺などの炎症(副性器機能異常)
5, 染色体・遺伝子異常
これらに対する治療法
① 生活指導・サプリメント処方
② 漢方薬・ホルモン剤・勃起不全治療薬など、各種薬剤
③ 必要に応じて下記治療目的で他院への紹介や受診をすすめます
・精巣内精子採取術
・人工授精、体外受精、顕微授精
下記の診療をもとに治療方針を説明します。
男性不妊診療の流れ
男性不妊外来に来院されましたら、まず問診票の記入をお願いします。
問診表を元に、以下の検査を行っていきます。
視診・触診
精巣の大きさ、精管の有無・太さ、精索静脈瘤の有無を診察します。
超音波検査
精巣腫瘍や精索静脈瘤の有無をみます。
精液検査
精液量、精子濃度、精子運動率、前進運動性、正常形能率、白血球等を調べます。精子の形や動きを静止画と動画で確認できます。
内分泌検査
必要に応じて、精液量や精子状態に関連する血液検査(FSH・LH・プロラクチン・テストステロン)を行います。
結果は後日再来にて報告・説明します。
男性不妊特殊検査(保険適応外)
・精子DNA断片化検査(精子DFI検査)
精子DFI検査とは、精液検査では反映されない精子内部のDNA損傷の状態を評価する検査です。
DFI検査は射出された精液を使って行います。
射出された精子のなかで、通常数%~数十%の割合でDNA損傷がみられます。DNA損傷の割合が高いことと、
不妊症・不育症との関連性が高いことが報告されています。
損傷したDNAを持つ(断片化)精子の割合をみたものをDNA断片化指数(DFI )といいます。
この割合は加齢・喫煙・精索静脈瘤、つまり酸化ストレスの影響により上昇するものと考えられます。
DFIが高いと、受精率低下・妊娠率の低下・流産率上昇・受精卵の発育不良を起こすとの報告がありますので、対応が必要です。
DFI検査が勧められるのは、精液検査上明らかな異常がないにもかかわらずなかなか妊娠成立しない場合や、
流産を繰り返しているなどの場合です。
精子DNA断片化指数(DFI検査):15000円 結果報告は2-3週間後になります。
・染色体・遺伝子検査
精子数が異常に少ない時や精子が確認できない場合に血液検査で行います。結果は2-3週間後の再来時に説明しますが、
当院では結果に対するカウンセリングは行っておりません。
染色体検査:30000円 遺伝子検査:40000円
ブライダルチェック(男性のみ)
ブライダルチェックとは、結婚を考えている方や、結婚して妊活中もしくは妊活を始めようとしているときに、子どもをつくるうえで自分の精子に問題がないか、性感染症がないか等を調べることをいいます。
当院では、将来子どもを持つことを希望している男性を対象に、様々な検査を行っています。ブライダルチェックは保険適応外です。
検査内容
1.精液検査
2.精子DNA断片化検査(精子DFI検査)
3.感染症検査
尿検査;淋菌、クラミジア、トリコモナス、マイコプラズマ・ジェニタリウム
血液検査;梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV感染症
風疹ウイルス抗体
4.超音波検査
5.内分泌血液検査(FSH・LH・プロラクチン・テストステロン)
※1, 4は当日結果報告できますが、1.は採精してから1-1.5時間後の結果報告になります。
2,3,5は1-4週間後再来にて結果を報告します。
金額は、検査内容により12000円から55000円になります。